{だ}の脱落からみる日本語の未来

この半年ばかり、ずっと気になっていたこと。
それは、文中における{だ}の省略、脱落です。

例えば、

A 彼は元気と思っていたのに、病気になっていた。
B 彼は元気と思っていたのに、病気になっていた。

最近のあなたはどちらを選んでいますか?

会話文の中で{だ}が抜けることは
特に関西系方言では昔から普通にあることでした。

ですが、いつの間にか、
おそらくここ2,3年の間で
急速に全国へと広まりをみせ、

さらに、
会話文だけでなく
一般の文章にまで浸透してきました。

ちなみにこの{だ}は
品詞的には

形容動詞の活用語尾の{だ}

または

断定の助動詞{だ}の終止形

のどちらかになるわけですが、
もともと、形容動詞の活用語尾の{だ}と
断定の助動詞の{だ}の区別については
日本語文法学上、
以前から論争の1つとされていて
未だ決着のつかない『揺れる』部分です。

例えば、

君は健康だ。

の場合、

{健康だ}という形容動詞の終止形と見るのが 一般です。

ちなみに、形容動詞か否かの判定基準は、

直上に{非常に}を付けて意味が通るか否か

直上に{非常に}{大変}など 程度を表す副詞を付けて意味が通るか否か

で決定されると今のところ定義はしてあります。

ではこれはどくでしょう。

君は女だ。

この例文は、ちょっと見ると

名詞である{女}+断定の助動詞{だ}の終止形

とするのが正しそうではあります。

しかし、

君は、非常に女だ。

と、言えなくもないですよね。

さらに、

君は非常に勉強家だ。

という例文になると、
果たして{勉強家だ}を形容動詞の仲間に入れることが
よろしいのかどうか、これを形容動詞とするのなら
数限りなく形容動詞が作られてしまうことになります。

このように、
形容動詞という存在は
学校教育で採用されている
みなさんがご存知の山田孝雄文法の中での
非常にわかりやすい矛盾点なのです。

ですから、中学受験〜大学受験まで
この形容動詞に絡めた設問はほぼ皆無です。
矛盾点を突かれると面倒だからです。

ものの様子や状態を表し、 語尾が{だ}で終わる活用のある語

というのが形容動詞の定義ですが、
今お話しましたように、
形容動詞にはブラックホール級の闇が潜んでいるのです。

そんな文法上
不安定な揺れる形容動詞を含む
語尾の{だ}が、
時代の流れの中で
自然的に消えてなくなることは、
日本語文法を学ぶものとしては
おおいに興味を引くところであります。

言葉というものは
言わなくても意味が通じるとわかるやいなや
じきに脱落していくものなのです。

短く、軽くなっていく・・・

それは決して悪いことではありませんが、
私のような文法オタクにとっては
会話ならともかく、
文章の中にそれを見かけるたびに
??
片腕をもがれた昆虫を見るような
そんな奇妙で不気味な感覚に襲われます。

あなたは気づいていましたか?