「まるっと」への止まらない違和感を止めるための考察


本当にここ半年ぐらいの短い期間で
どわーーーーっと現れた感がある、

「まるっと」

なぜだろう?
嫌に気にすればするほど
「まるっと」は
ついに私の身近なところまで
押し寄せてきた。

我が家にはテレビがないので
テレビのシーンでの「まるっと」の
出番のシチュエーションや頻出度が
いまいちよくわからないのだが、

つい数日前、
私がライティングコンサル
させていただいている
50代の女性の文章の中に、

家族まるっと腹痛になり・・・(汗)

のような感じで
さらっと使われているのを
目の当たりにしてしまった私は、

もう「まるっと」の存在を
無視することができないと悟り、
とりあえずネットから
「まるっと」(以下、彼)情報を漁ってみた。

彼が擬態語であろうことまでは
自身でもわかっていたのだが、
実は愛知県のとある地方の方言として
以前から存在していたという情報を掴み、
なぜか激しく安堵。

新語じゃなくてよかった・・・

私は心の底から嬉々とした。

彼が方言出身ならいいんだ。

もしも彼が、
渋谷辺りの若者言葉から発生した
新語だったりしたら、
私は相当に落胆したであろう。




彼から連想される言葉として、

「つるっと」
「ぬるっと」
「くるっと」
「うるっと」
「するっと」
「さらっと」

などが挙げられるが、

これら濁りのない清音から始まり促音を挟んでの副詞的用法の擬態語たちに共通するものは、

表面がなめらかで
なんの引っ掛かりもなく(清音からくるイメージ)
素早い動きを連想させる。

さらに彼の場合、そのイメージに加えてまるい形状までも(当然だけど)連想させる。

つまりまとめると、

表面がなめらかなまるいもの。しかも素早く動くなにか。
という、
まるで1体の謎の生物を連想させるかのような音と意味を彼は内包しているのである(汗)

だがしかし、彼は決してすでにひとまとまりの丸みを帯びた形状のものを形容する場面では使用されない。

私が彼に対する違和感が止まらないポイントはまさにここなのだ。彼が、
まるで1体の謎のまるい生物を連想させるかのような
音と意味を内包しているのは一向にかまわない。

問題は、その彼の出没する場所、彼の活用のされ方なのだ。

彼は、

街ごとまるっと停電した荷物をまるっと忘れてきた

のように、
「全部」とか「まるごと」という
ごちゃごちゃと複数あるものを
一括りとして表現する副詞の代わりに
決まって現れる

しかーし、
実際の彼の様態はそうじゃない。

彼の様態は、
表面がなめらかなまるいもの。しかも素早く動くなにか。
まるで1体の謎のまるい生物を
連想させるかのようなす姿。
あるいは、何かをそのような姿にさせる作用。

彼の存在の耐えられなさは、
まさにここがポイント。


「まるっと」
ごめんね。
私、どうしてもあなたのことが
気持ち悪くって・・・
あなたの存在が
ちょっと耐えられないの(涙)

かつて私がここまで
忌み嫌ってしまった新語って
あっただろうか・・・

いや、彼自体は悪くないのだ。

人間たちの彼の活用のし方が
ことごとく間違っているから
いけないんだ。

「家族」は「まるっと」していないし、
瞬時にそのようなカタチにひとつ丸めることもできない。
「荷物」も「まるっと」はしていないし、
瞬時にそのようなカタチにひとつ丸めることもできない。
むしろ個々の形状はバラバラ。スピード感という指標では測れない名詞。表面だって、
個々のいろいろな形のものが集まっているのだからなめらかであるはずがない。

「まるっと」

君はどんなときなら
君の君たる個性が生かされるのだろう・・・



今日、近所のお肉屋さんで小さな若鶏をまるっと
一羽仕込んでもらったよ。


これならいいかも。

これだったら、
彼の持ち味が
なんとか生かされている(気がする)。

それにしても
なかなかよい文例が思いつかない。

「まるっと」と聞くと、
実は私の頭の中には
生徒から回収した何百枚という
原稿用紙を前に、
赤ペンが1日でかすれるほど
丸付けをした、
あの教師時代の暗黒なシーンしか
思い浮かばないのだ。

ひょっとしたら
彼を忌み嫌う本当の理由はそれ?

それはともかく「まるっと」の
素朴な方言活用の実際が知りたくなってきた。

一度、彼が生まれたという
愛知県のとある町へと行ってみようか。