内容の是非もさることながらそれ以前の問題を解決したくなった
2019年9月17日、組閣改編後環境大臣に就任された小泉純一郎議員が、福島原発事故後増え続ける汚染土について、以前国が公約として掲げた「30年以内に汚染土を福島県外へ移設する」という言説に関する自身のコメントを発表されました。
発表といっても記者に囲まれフリートークで発信されたのですが、その実に巧妙?意味不明瞭な内容に、ツイッターなど庶民のSNS界隈で話題騒然となりました。
私もそのうちの1人。
そのインパクトの強さのためか、進次郎議員のコメントの文言を、どなたかが忠実に文字に起こし作成された画像が、当時ツイッター上で広く拡散されていました。
画像はこちら↓
私はこの画像の文章を読み、僭越ながらも日本語文法的にツッコミたい気持ちをどうしても抑えられなくなりました。
そこで文章学研究者の1人としてコメントします。
この文章で一番まずい部分はここだ!
こちらの画像の小泉大臣のコメントを再度書き出してみます。
私の中で三十年後ってことを考えたときに、三十年後の自分は何歳かなとあの発火直後から考えていました。
だからこそ私は、健康でいられればその三十年後の約束を守れるかどうかという、そこの節目を私は見届ける可能性のある政治家だと思います。
このたった二文の短いコメントを「どこか狂ったおかしさに溢れたコメント」ととして、世の人々の心中に強烈なインパクトを与えた真犯人。
それは、二文目の冒頭の接続詞 [だからこそ][dakara-koso]であると私は断定致します。
[だからこそ]とは ・・・
➕
接続詞とは、文と文をつなぐ自立語。
順接の接続詞とは、「前の事柄が原因・理由・根拠となり、後の事がらが結果・結論となることを示す」接続詞です。
ですから「だからこそ」は、その順接接続詞「だから」に強意の副助詞「こそ」が接続することで、根拠となる前文の事柄をより強める働きを持っているのです。
したがって、進次郎議員の一文目のコメントは、二文目のコメントへと導く強烈な根拠とならなければいけないところなのですが・・・
非常に残念ながら、「一文目の事柄(内容)が、二文目の事柄(内容)の根拠には全くなっていない」のです(悲)
この二文を聴いた直後の人々の頭の中↓(想像)
【 一文目 / 根拠・理由 】
30年後の自分が
何歳になっているかについて考えた。
↓
だからこそ、
↓
【 二文目 / 結論・結果 】
自分が30年後に生きていたら
事の成り行きを見届けることができる可能性がある政治家だと思う。
↓
なぜ?なぜ「だからこそ」なの???
取り立てて文法の知識がなくとも、幼い頃から正しい日本語の会話の中で育っていれば、自然に身に付いているはずの接続詞「だからこそ」の使用法を、進次郎議員は完全にお間違えになったのです。
ですから人々は、進次郎議員のコメントを聴いた瞬間、頭の中が猛烈な勢いで混乱し「?」で満たされた世界へ堕ちていったというわけです。
接続詞で地頭の良し悪しがわかる
そもそも、受験国語の文法設問の中で最も難しい問題が「接続詞」の用法なのです。
ですから、日本有数のエリート私立受験校では、中学受験国語の設問に必ずと言ってよいほど接続詞を選ばせる問題を採用しているのです。
漢字が書ける云々のような暗記ものではなく、論理的な思考ができる生徒か否かを見極めるのに、接続詞の問題を解かせるのが一番わかり易いからです。
というわけで、最終的に期せずして非常に辛口な結論に至ってしまいましたが、このコラムは決して個人を特定して虐めるものではありません。
あくまで「接続詞」の持つ影響力の大きさとその重要性について、日本語を使用する皆様にぜひ知っていただきたく拙筆致した次第です。